行政書士に依頼をする前に②申請に必要な期間、期限

では今回は、「行政書士に依頼をする前に確認しなければいけないこと」第二項である。申請に必要な期間や期限について、総括記事の際に記述した順に従って、実例を踏まえながら説明していこう。
許可内容は、前回と同じく風俗営業2号営業許可を例にとるものとする。

許可申請に必要となる期間

許可申請に必要となる期間というのは、申請者が許可の取得を望んで行政書士事務所に訪れた瞬間から、事業を開始することができる日までの、全ての期間である。

実例とする風俗営業許可は、いわゆるキャバクラやホストクラブ、スナックなどを営む際に必要となる許可である。申請を必要とする事業者にとっては、一刻も早い許可の取得が望まれる業種である。なぜなら、風俗営業2号営業許可の申請は事業所の設備を調えてからでなければ提出することができない。つまり、賃貸借契約を交わし、内装を施し、営業できる状態になってからでなければ、許認可の申請自体を始められないのである。このような許可においては申請が遅れることは、すでにお金を払っている状態であるのに、オープン(利益を生むことができる)までの期間が延びることを意味する。家賃は勿論のこと、従業員のボーイやキャストの確保を早期に行っている場合などは、その人件費までが許可通知まで何十万円、何百万円と積み重なっていくのだ。

つまり、許可申請に係る「期間」というものは、斯様に重要なファクターなのである。
では順を追って説明して行こう。

1.申請までに必要な期間

これは、相談者が「相談を行って」から「申請を実際に行う」までに、どのくらいの期間が必要ですか、という意味である。今回の場合で言えば、風俗営業許可申請における添付書類の収集(身分証明書の取得は遠方であれば郵送でのやり取りに時間がかかるし、大家さんが使用承諾書に署名して頂けなければ、期間は際限なく伸びることであろう。また、営業所の面積が500㎡を超えるような大箱であれば、図面の作成にも通常より時間がかかる。)に必要な期間ということになる。
そういった、各申請者のケースバイケースに合わせた申請書類作成や収集にどのぐらいの期間がかかるか、というのは、相談者にとっては非常に重要なチェックポイントである。

ここは特に行政書士の経験、手腕によって期間の異なる部分である。「許可までの期間の短縮」というものは、基本的にこの「準備期間の短縮」でしか行う事が出来ない、ということをよく理解して依頼を検討すべきである。

まともな行政書士であれば、期間の問題についてはきちんとした説明があり、また相談には乗ってもらえることであろう。申請者の事情を斟酌した上で最適なプランニングを立てるのが行政書士が許認可のプロたる証左である。急ぎの場合は、是非担当行政書士と一緒に事業開始までの日程計画を立てると良い。
通常ならば何日かかるが、急ぎの場合は何日でできます、との答えがあれば安心して依頼ができることであろう。

2.標準処理期間

実際に申請書類を提出してから、営業者又は行政書士に許可の連絡(電話)が来るまでの期間である。風俗営業2号営業許可では「標準処理期間55日」と定められている。そのため、実感としては許可の連絡は申請から52~55日後に頂くことが多い。(但しこの期間は都道府県によって取り扱いが異なることがあるので、くれぐれも注意されたい。ちなみに上記は神奈川県における数字である。)

また、許可業種によっては標準処理期間に関わらず、審査が終われば順次許可通知を出すものと、審査が終わっていたとしても標準処理期間に合わせて許可通知をするものとに分かれている。
申請しようとする許可がどちらかは是非確認しておきたい。

3.許可通知後、業務開始まで

風俗営業2号営業許可においては、許可通知後はタイムラグなく営業を開始することができる。許可の通知(電話)から実際の許可証受領までは一週間ほどかかるものの、営業開始は連絡時から可能である。そのため許可通知後の期間については心配をすることはないが、一般貨物自動車運送事業をはじめとする物流関係の許可、認可は、通常許可通知後事業の開始までに管理者の専任等、いくつかの手続を挟むことになる。

ここは申請が準備完了後に行われる性格のものと、予定を含んで行われる性格のものという違いもあるだろう。運送業許可の申請においては申請時点における施設の準備はあくまで予定している状態で「可」であるが、風俗営業においてはすべて準備が完了していなければ「不可」である。
許可業種によっては、せっかく許可の通知となったのに、いらぬ肩すかしを食らうことになる。予定を立てる際にも弊害となるので、是非確認されたい。

4.期間の延長について

最後に確認したいのが、期間の延長についてである、これは上記1.2.3.の全てに当てはまる。どのような場合に、呈示期間の延長があるか、という点である。行政書士の都合もあれば、依頼者の都合、行政庁の都合もある。どんな場合に、どのような理由によって延長がありうるかの確認は是非忘れないようにされたい。
いくら優れた行政書士と言えども、行政庁の都合はどうすることもできない。また、依頼者から頂く情報等、準備すべき要件の成就なしに申請を完了させることはできない。

まとめ

以上のように、各期限、期間について詳細に確認しておくことは、行政書士に対して、この案件は急いでやって下さいね、という無言の圧力にもなる。また、当たり前の話だが、適正な期間を把握することによって、適正な事業計画を策定することができる。
私もよく言われる言葉だが、「うまくやっておいてね」という言葉だけでは、必ずしもうまくやってくれるとは限らない。
こちらの予定を行政書士にきちんと説明し、あちらの計画をきちんと説明してもらう。
モチロンまかせるところはまかせるべきだが、依頼者側が手綱を握らなければならないケースもあるということを知っておこう。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.